実際に磁性・伝導性を合わせ持つ系を構築しようとする場合、有機ドナーからなる導電体に、ラジカル部位を持たせる、という方法が考えられます。しかし、ここで解決しなければならない課題がたくさんあります。まず、ここで用いるラジカルは化学的に安定である必要がありますが、これまでに知られている安定ラジカルというのは、それほど多くありませんので、ここで用いるための候補というのは、必然的に、かなり限られたものとなってきます。また、ここではドナー部分が混合原子価状態のカラムを形成している絵になっていますが、実際にこうした状況になるためには、ドナーの中性状態および酸化状態において、このラジカル部分が、この状態を保っていることが必要です。中性ドナーの電子がラジカル部分に移ってしまったり、あるいはラジカルの不対電子が、酸化状態にあるドナーに移ってしまったりすると、このような状況を実現することができません。