ベンゼン環を間にはさんだ場合、ピロールのhomoとNNのnhomoに由来する軌道が取り残されているのは同じですが、ピロールのnhomoとベンゼン環のhomoが相互作用した軌道がN-フェニルピロールでのhomoとなっており、この軌道はNNとつながる位置に大きな係数分布を持っているため、NNのnhomoと大きな相互作用を持ち、分子全体に広がったHOMOを形成していると考えられます。この分子について行ったUHF分子軌道計算でも、αスピン軌道、βスピン軌道の両方において、この軌道が最高準位にあることが示されています。このような状況の下で一電子酸化が起こった場合、HOMOから電子が抜かれて、カチオンジラジカルを形成すると考えられます。