
この交換相互作用が生じる理由は、次のように説明できます。ある電子があった場合に、これと同じスピンの電子は近づくことができないのに対し、逆向きのスピンを持ったものは近くに来ることができます。このため、電子1と電子2の間の電子間反発の大きさを比較すると、逆向きスピンの状態と比較して、同種のスピンの場合には2Kijだけ電子間反発が小さくなります。このようにスピンの種類に依存してクーロン反発の大きさが異なるので、Tripletの方が安定化されるわけです。このような効果が大きく現れるためには、電子同士が近くに来る可能性が大きいことが必要です。先ほどのトリメチレンメタンの場合には、同じ原子軌道が共有されていたので、電子同士が近づく可能性が大きくなり、大きな交換相互作用を生じたというわけです。
