ここまでをまとめますと、基底状態三重項のカチオンジラジカルを、TTF系のドナーラジカルから生成させることに成功しました。これは結局、パラフェニレンをドナーとラジカルの間に挿入することによって実現したわけですが、このパラフェニレンは、このドナーラジカルにおいて、立体障害を緩和することによって、分子内のねじれを防止する役割を果たしていると考えられます。ということで、分子内に正の交換相互作用を導入することには成功したわけですが、ここで作った分子を用いて、さらに電解結晶化などを行っても、どうしてもうまくいきませんでした。そこで、さらに分子の改良を行うこととしました。